2008-09-21

不登校

小6の男の子が不登校になったということで、親御さんから院長が相談を受けました。
親御さんは以前からいらしている方で、どういう病院にかかったら良いのかと思案していました。
「心療内科の先生も知っているし、状態によっては紹介もできるので、とにかく一度連れてきてみてください。」ということで、彼はやってきました。

初めて会った時は、返事もほとんどなく、ぼーっとしたような感じで覇気がない、能面を付けたかのような無表情でした。
いわゆる鬱の症状に似ています。医師の診断ではないので、断言はできませんが。
本人も何が原因かわからず、苦しんでいました。親御さんもどうしていいかわからずに困っていました。
初回は安心感と信頼感を持ってもらおうと思い、鍼は使わず、お灸の暖かさと、アロマテラピー(オイルマッサージ)で手の温かさを感じてもらいました。口に出せないことでも、感じ取れることはあります。
体の反応を頼りにしました。「嫌なことあったらすぐ言ってよ。遠慮しないでよ〜。」なんて言いながら。
あれこれ聞かずに気持ち良かったかと聞いたら、コクッと頷いて帰りました。

その後、親御さんが治療院に行きたいかと聞いたら、行くと本人が言ったそうで、続けて来院してくれました。
体が緩むと、心も緩むようで、少し表情が出てきます。
私は、こんなケースは初めてで内心どうしていいのかわからず、ひやひやしたり、本人が帰っても気になってあれこれ考えたりとずいぶん悩みましたが、「この子に可愛い笑顔を取り戻させる。」と、できるのかわからない決意をしました。
「学校はすぐに行けなくても良い。とにかく、楽しい時は笑顔を。嫌なことがあったら嫌な顔を。悲しければ涙を流せる。そんな素直な反応をしてもらおう。」と決めました。

そんなこんなで色々と考えて臨んでみた何回目かの時、「今日学校行ったよ。」って言うんです。
R「へ〜。行けたの?すごいね。何の授業出たの?(かなり平静を装ったつもりですが、マジびっくり。)」
少年『テストだった。」
R「全部出たの?どう?できた?」
少年「全部埋められたよ。」
R『頭良いのねぇ。すごいじゃ〜ん。得意な教科ってあるの?」
少年「理科と算数かな。クラスで2番だよ。」(確かこう言ってたと思います。違ってたらごめんね。)
R「へ〜。(本気で感心。)小学生の理科って面白かった気がする〜。実験とか楽しいよね〜。」

なんて会話が繰り広げられ、いつもよりたくさん話してることに満足しました。
二人で話している向こうでは、院長とお母さんが少年のことをあれこれ話しています。
R「大事にされてるね〜。」
少年「そう?」
R「そりゃそうよ。お父さんだって、この間会社休んで連れてきてくれてたじゃない。」
少年「。。。」
R「可愛くってしょうがないんだよ。うるさいって思うこともあるだろうけど〜。」
と、多少一方的に話してしまいましたが、その日は笑顔が見られたのを覚えています。

それから後の日に、必要だなと感じたので、結果的に痛い鍼になってしまった鍼をしました。
いまだに「激痛だった。」と言われてしまう鍼でしたが(ごめんね〜笑)、それが転機になったようで、学校を休まずに行っているようでした。

GWを挟んだら、急に体が大きくなったような感じがしました。
顔つきも少し大人っぽくなりました。
まさに、子供から大人に変わる瞬間を見た気がしました。
子供でも、大人でも、そのときの感受性で色々考え、色々悩んでいるとわかりました。
少年を、子供でも大人でもなく、彼個人として対面できて良かったと思います。
もやもやと苦しいことは苦しくなくなってから、わかると学びました。
悩むことや、悲しいことも、人生には必要なことですね。

今日も久しぶりに顔を見ましたが、10年後も、20年後も顔が見られると嬉しいです。

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